何もない所から武器を作る方法21

二次審査を通過した。

喜びもつかの間、僕は一次審査時からSNSや周りに「最終ライブ審査まで行けたら大丈夫、絶対にライブだったらサマソニ獲れる。」と大口を叩いていた。

その大口がとてつもない大きなプレッシャーになって僕に襲いかかって来た。

 

最終ライブ審査までやれる事を全てやって不安を無くそうと必死だった。

まず、1300組いたアーティストは最終ライブ審査時には22組まで絞られており、僕以外はバンドや生演奏を主とするアーティスト達だった。

そして、審査員はバンド出身の方が大半を占めていた。

 

僕のライブは生演奏ではない。

CDJを使用した1MC1DJのライブスタイルなので、少し部が悪いのではないか。

どうしよう、出ようとしているのが野外のロックフェスなので生演奏の方が良いよな。

どうしよう、普段通りライブすれば良いのか?それで本当に大丈夫か?

不安が次から次に出てくる。

 

この生演奏に対する課題は、今から生演奏を取り入れるのは無理なので普段より大振りな地団駄で臨場感を出しカバーする事にした。

大振りな地団駄、僕はこの時どうかしていたのかもしれない。

 

このチャンスを逃せば、また1年後悔に埋もれて過ごす事になる。

最終ライブ審査でダメだったら、去年よりも遥かにショックが大きい。

立ち直れないかもしれない。

でも、このチャンスをものに出来れば間違いなく頭1つ抜きに出れる。

何よりさらなる自信に繋がる。

 

もうやるべきことは全部やった。

一番重要な事は当日までのそして当日のモチベーションを高く保つ事だった。

これがとても難しく、何度も書くけど本当に不安だった。

 

 

最終ライブ審査が翌週に迫っていたある日、母親から電話があり実家で15年飼い続けていたタロー(犬)が老衰で週末が山かもしれないから最後に会いに帰って来て欲しいとの連絡を受けた。

しかし、僕は翌週に大事なオーディションがあるからと帰省を断わった。

きっともう少し生きてくれるだろうと思った。

 

そして、週が明け不安とプレッシャーであまり寝付けないまま迎えた最終ライブ審査の朝。

母親から電話でタロー(犬)が先程亡くなった事を知らされた。

目が真っ赤に腫れるまで泣いて、会社が午前休しかくれなかったから午後の出勤の為、スーツの袖に腕を通しながら僕は決めた。

この日の朝まで頑張って生きてくれてありがとう。

 

絶対にどんな手を使ってでも必ず今日SUMMER SONICを獲ると。

 

不安なんてもう無かった。

 

 

 

つづく