ものすごく天気が良くて暑い日だった。
最終ライブ審査の会場に向かう電車の中。
自分で言うのもなんですが、この日の僕はスーツ姿ですが殺気にも似たオーラを身に纏っていたと思う。
本当にすごいオーラだったと思う。
だって、満員に近い電車内で誰も僕に近付いて来なかった。
いつも出勤の時はもみくちゃにされるのに。
自分で言うのもなんですが、僕は普段は非常に温厚だ。
酔っ払った友達が僕の携帯電話を投げても落下した場所が芝生だったら怒らないくらい温厚だ。
落下した場所が川とか高速道路だったら怒る。
そんな僕がこの日は殺気立つオーラを見に纏っていたのだ。
今日まで不安とプレッシャーとの闘いだったし、思い起こせば1年前からずっとこの日を待っていたわけだから自然とそういうオーラが出たんだと思った。
会場最寄りの駅のトイレで髪型を整えようと思ったら、涙と鼻水が出ていた。
僕はタロー(犬)を思い出し、移動中も涙と鼻水を流していたのだ。
キレイに拭き取って気合いを入れた。
会場の外のコンビニでライブDJのワンカップさんと待ち合わせていた。
僕
「今日の僕、オーラすごくないですか?」
ワンカップさん
「え?何?何?取りあえずその発言が気持ち悪い」
僕
「」
まぁ、ワンカップさんは仲間だから僕のオーラは別に見えなくて良いのだ。
僕は大きく深呼吸して会場の入り口に向かった。
すると、スタッフの方が僕の事をワンカップさんのマネージャーと勘違いしたのだ。
スタッフさん
「あっDJのマネージャーさん!狐火さんって何時入りかわかりますか?」
僕
「」
なんと、僕のオーラはマネージャーオーラだったのだ。
僕はマネージャーオーラを得意気に身に纏い涙と鼻水を流しながらここまで来たのだ。
このどうでもいい一件で良い感じに肩の力が抜けリラックス出来た。
控え室に入ると僕と同じく最終ライブ審査に進んだ方々が居た。
僕はこの人達を全員蹴落とし踏み台にするので、別に仲良くする必要もない。
だから、軽い挨拶だけした。
なんて、かっこつけたが僕は単なる人見知りだった。
控え室で缶ビールを飲み始めるワンカップさんを尻目に僕は1人イメージトレーニングに集中した。
「待ってろ審査員」
いつかのワンダーボーイの言葉を思い出した。