何もない所から武器を作る方法4

前回までの話

 

僕のライブはCDにライブ用トラックを焼いてオケとして持参して、それをCDJから流して行うため1人でライブする際はライブハウスのスタッフの方にその作業を手伝って頂く事になる。

しばらくはそうやって1人でライブを行っていた。

 

そんなある日、いつも通り1人でライブをしていた僕に声をかけてくれた女性がいた。

その女性はなぜかDJブースで「ワンカップ」を飲んでいた。

『ライブDJがいないなら私がやってあげようか?』

DJ miss one cup(以下、ワンカップさん)さんだ。

実は2007年のB BOY PARKの時に挨拶だけした事があった。

僕の活動をSNSでチェックしてくれていた。

 

この当時のワンカップさんはメジャーのアイドルやシンガーや自身の所属するHOSHIKUZU4のライブDJもされていて、ほぼ無名の僕のライブDJをしてもメリットというかむしろデメリットしかない。

周囲の反対を押し切ってなぜか僕のライブDJをしてくれる事になった。

1人ぼっちだった僕をリハーサル後に居酒屋に連れて行ってくれたり本当に感謝している。

そして、僕のライブにワンカップさん目当てのお客さんが来るようになった。

というか、僕のライブ中に9割のお客さんが僕じゃなくワンカップさんを見ていた。

 

この時、自分のライブDJをやってくれるお礼に「絶対にいつかB BOY PARKに出演します!」と約束した。

(B BOY PARKとは、夏に代々木公園で行われる国内最大規模のヒップホップパーティーで僕はB BOY PARKに出演する事をラップ始めた当初から目標にしていた。)

 

ワンカップさんはすごい。

ワンカップさんがライブDJについてくれた事により、僕はより一層ライブに集中出来るようになった。

僕のライブはトラック(オケ)の音よりもマイクを通す声がはっきり聴こえる様な調整をいつも行っている。

その調整もリハーサルでワンカップさんがPAさんと相談しながら行ってくれた。

 

とても心強かった。

 

それだけではなく割りと人見知りでコミュニケーション能力に欠けている僕の間に入って色々と物事を穏便に進めてくれたりもした。

 

そして、とにかくお酒が好きだった。


僕は誰かと組んで音楽をやるのはもういいやと思っていた。

身を持ってグループを維持し続ける大変さを知っていたつもりだったから、どうせ途中で辞めてしまうんじゃないかって思ってた。

けど、ワンカップさんは違った。

僕のライブに合わせて仕事のシフトを組んでくれて、ここから今に至る約10年間、ワンカップさんは都内近郊の僕のライブDJをしてくれている。

 

 

つづく