何もない所から武器を作る方法41

簡単に口を割った梅酢君が観音さんに捕まり、ボトルテキーラを口に突っ込まれた姿で発見されたのはその数日後だった。

 

まるで、マフィアだ。

 

そこからさらに数日が経ったある日、何気なく観音さんがボトルテキーラを持っている所を撮った写真を見て僕は思わず背筋が凍った。

これは、心霊写真か。

そこにはあるはずの観音さんの顔が無く、ボトルテキーラのラベル越しにこちらを悲しげに見ているメガネの男性の顔がはっきりと写っていたのだ。

 

その写真がこちらになります。

その男性に見覚えがあった。

観音さんにそっくりである。

 

僕は混乱した。

 

なぜボトルを通すと観音さんの実態が消えるのか。

なぜボトルの中に観音さんがいるのか。

なぜ、あんなにボトルの中の観音さんは悲しそうなのか。

 

そして、ある仮説に辿りついた。

 

観音クリエイション、実はテキーラの妖精説。

 

僕はこの頃、テキーラは好んで飲むものじゃないと思っていた。

クラブやライブハウスでテキーラショットの一気飲みを山ほど飲まされ、どちらかというと苦い思い出の方が多かったからだ。

まずプライベートで頼まないお酒ナンバーワンだと思っていた。

 

それを悲しんでいるとしたら、この写真の表情も納得がいく。

 

僕は観音さんと出会う前からの記憶を辿り始めた。

そういえば、いつでもボトルテキーラには観音さんが居てこっちを見ていた様な気がする。

 

最初は喜んで飲んでいたのに、じょじょにテキーラを遠ざける様になっていく僕に耐えられずに観音さんが人間の姿で僕の前に現れていたとしたら。

全てに合点がつく。

 

皆でテキーラショットを飲む時も観音さんは自分のショットを飲まずに皆が飲み干す様子を嬉しそうに眺めていた。

本当に嬉しかったんだ。

 

ビンタしたあの日も、僕と梅酢君は全くテキーラを飲んでいなかった。

観音さんはそこにずっと苛立ちを感じていたとしたら。

僕はそんな純粋なテキーラの妖精をビンタした事になる。

 

「テキーラを、僕を、嫌わないで」

 

そんな観音さんの心の声が聞こえて来た気がした。

 

彼は彼なりに自分のやり方でがんばっていたんだ。

何だか悪い事をしたな。

 

次に観音さんと会う時はテキーラ戦闘服を着て行ってあげよう。

 

「狐火の周りって何か人としてやばい奴ばっかりだな」と言われ始めたのもこの頃だった。

 

そして、季節は次へとめぐる。