ただ週末を目指して座り続けるデスク。
そんなある日、兵庫県のとある高校の三年生の学年主任の先生からライブオファーが来た。
内容は、二ヶ月後に行われる卒業式でのサプライズライブの依頼だった。
昨年出演したNHKのラジオを偶然車で聴き、僕のことを知り、ぜひ巣立っていく卒業生にも聴かせたいと、それが学年主任としての最後にできることだと考えた様だ。
自分が一番わかっているが、僕はサプライズライブが出来るほどの知名度がない。
サプライズとは知名度がそこそこあってこそ成立する。
そして、母校ならまだしも、縁もゆかりもない行ったこともない町の高校だ。
そういった不安は事前にオファーをくれた先生に話したうえで依頼を受けることにした。
これは誰にとってのサプライズになるのか、やってみないとわからなかった。
リハーサルのため卒業式前日に現地入りした。
新神戸駅から電車を乗り継ぎ、初めて見る車窓を余すことなく自分の中に取り込んで。
出来るだけこの町に馴染んでからライブをしたかった。
駅を出ると先生が車で迎えに来てくれていて、町の話や今回の経緯など他愛のない話をしながら会場となる高校の体育館へ向かった。
体育館は翌日の卒業式に向けて準備が進められていた。
思っていたよりも大きな体育館で、思っていたよりもたくさんのパイプ椅子で。
その一つに座って見上げると高い天井の柱にバレーボールが挟まっているのが見えた。
ここに来ないとわからないことばかりだった。
先生は副学年主任や同じ三年生を担当している同僚を紹介してくれたり、軽い冗談を交えながら僕の緊張をほぐそうとしていた。
当日の僕のライブDJは卒業を迎える生徒の中に一人DJを志している子がいて、その子が担当してくれるとのことだ。
初めてリハーサルで顔合わせした。
その子にとっては初めてのステージで、僕にとっても色々と初めてのステージだ。
初めてというか、色んな意味で最初で最後のステージだ。
どんなライブも同じものはないから最初で最後ではあるけれど、今回はその色が一層強く感じた。
僕はネガティブというか、常に最悪を想定して心の準備をする癖がある。
卒業式は一生思い出に残る、3月が来る度に思い出す。
だから、悪い思い出にだけはしたくないのです。
自分の高校時代を思い出しながら壇上をゆっくりと歩いてみた。
何度も後ろを振り返った。
初めて来た場所だけど、この眺めは何度も見た様な気がした。
まだ誰もいない体育館で「体育館は全国共通だから大丈夫」というわけのわからない解釈を作り明日へ自分を送り出した。
つづく

