作った武器を抱えていく7

靴紐を締め直し、「またね」と言う。

実家から東京に戻る時はだいたい始発の新幹線に新白河駅から乗車する。
父と母に車で駅まで送ってもらい、改札横のコンビニで缶ビールを2本買い、「また、がんばろう」と毎回自分に言い聞かせる。
車窓は新緑の鮮やかさで始まり、徐々にビルの色へと変わっていく。
初めて上京した時の気持ちは、そんな車窓から今でも色褪せずに覗き込むことが出来る。
おのずと缶ビールを口元に運ぶペースも早くなる。
やはり、冷たいうちに飲むのが美味しいからだ。
「一番おいしい時期」というのは時間との勝負だが、これは音楽活動にもあてはまる。
車窓の様に周囲の時間も過ぎていくから。

東京に戻ると相変わらず、酒を飲む日々だ。
というのも、酒ばかり飲んでいたわけではないが、カメラフォルダに酒を飲んでいる写真しかないのだ。
決して酒ばかり飲んで過ごしていたわけではない。
後に、ライブサポートをワンカップさんとともに手伝ってくれるDJタンジーに出会ったのもこの頃だった。

初めてZeebraさんにお会いしたのもこの頃だ。
僕は『Grateful Days / Dragon Ash feat.Aco,Zeebra』に衝撃を受けてラップを始めた。
やはり本人を目の前にすると一瞬で10代の頃の自分に戻った様な感覚になった。

ラップを始めたばかりの頃に周りにいた仲間に自慢したかったが、この感動を分かち合う仲間はもう周りに残っていなかった。
ビーボーイパークに出た時も思った。
あの時も本当は自慢したい仲間がいた。
僕がビーボーイパークに出たのが遅過ぎたのか、感動の旬が過ぎた様な反応だった。
これも学生時代など何にでも興味を持ち、多感で、ある程度の時間に余裕があった「一番おいしい時期」であれば僕は大学内のヒーローになっていたと思う。

大半が結婚して家庭を持った今、自分はうれしい気持ちとどこかさみしい気持ちを感じた。
そういった意味ではあの頃が、「一番おいしい時期」だったのかもしれない。
まるで、自分だけの長い夢を見ているようだった。

ただ自分は思う。
例え旬が過ぎていたとしても、今日も続けている日々は、過ぎた旬にさえ光を当ててくれる。
ぬるい缶ビールを飲みながら、そんな自分を重ねていた。

あっという間に2017年も半分が過ぎて、夏がやって来た。


つづく