何もない所から20

そして、2005年3月、大学卒業へ。

思い残したことはたくさんあったと思う。
空っぽになった1Kのアパートを見上げると4年前はじめて一人暮らしを始めた自分が不安そうにロフトから覗き込んでいる様な気がした。


2005年の春はきっといつまでも覚えていると思う。

 

人前で涙を見せたことのないノースカントも思わず花粉のせいにして大学の門に目頭を押さえこむように寄りかかっていた。

 

ミツヤマ君は引っ越しの際に部屋に置き忘れたヤカンを持って卒業式に出席していた。

「俺としたことが、たくさんカップ麺を作ってくれたヤカンを忘れるなんて。」

 

みんながそれぞれの思い出と向き合い別れを告げていた。

 

ふと、良く座ってたベンチを見るとイッキさんがいた。

 

イッキさん

「よぉ!卒業おめでとう!俺の近況だけどいわき市で就職決まったよ!それと、今年結婚することになったからよ!結婚式来てくれよ!」

 

僕の卒業式なのにその何倍も色々な情報を放り込んでくるのがイッキさんらしい。

 

大学の外にあるコンビニの駐車場にはショウゴ君達もいた。

次のライブ、つまり社会人初ライブはゴールデンウイークに決まっていた。

 

だから「またね!」と言って別れた。


あの時は同級生に対してどうせまた会えるだろうからと、全員に「またね!」と言った気がした。

 

後輩のリョウヘイ君が「ラップは続けるんすか?」と何気なく聞いてきた。

 

「ラップは30才になっても、いつか40才になっても続けるよ」

 

大学生らしい最後の大口だろうけど、それが正解なのかはその先の自分しか知らない。

 

みんなは卒業式のあとに飲み会の予定を入れていたが、僕とノースカントは翌日から社会人として東京池袋の本社で研修が始まるということで後ろ髪を引かれながら行きつけのファミマでファミチキを買って、母の車の助手席に座り、いわき市を後にした。

 


つづく