何もない所から25

このままでは音楽どころではない。

何人か辞めようとした同期が人事部に相談に行き、人事部長に説得されて、結局辞めれずに最終的に飛んだという話を聞いていた。

 

僕もノースカントと同じように追い込まれていた。

もうこんな仕事は辞めてしまいたい。

『新卒で3年は働かないと再就職をするにも難しい』という話を耳にした。

確かにまだ入社して半年だし、4年間の大学生活と比べ過ぎて今がつらいのかとも思ったが、多分そうじゃない。

僕らだけではなく中途採用の方々も次々と飛んでいたからだ。

 

周りや家族には『せっかく入社出来たのだからもう少しがんばってみては?』と言われたが、それどころではなかった。

そして、離職率が高く常に人手不足なのでこの会社ならいつでも誰でも入社出来るのではないかとも思った。


それらは確信に変わり、ある日、ノースカントと人事部に退職の相談をしに行く事にした。

 

怒られたらどうしようとか、色々な思いがめぐりなかなか人事部のドアを開けれずにいた。

 

僕は気持ちを落ち着けるためトイレに行き、ノースカントは喫煙室に一服しに行った。

すると、トイレに総務部の部長ユゼという方がいた。

 

ユゼさん

「あれ?新卒?さっき人事部のドアの前でうろうろしてたけど何かあった?」

 

僕は心臓が飛び出たのではないかと思うほどドキっとしたが、もうこれで最後だと思い正直に言った。

「お疲れ様です。新卒です。仕事がつらいので辞めようと思い退職の相談に行こうと思っていました。」

ユゼさん

「まぁ、気持ちはわかる。」

その時の会話はそれだけだった。

 

つづく