何もない所から37

あっという間にDSさんとBOM君が上京して半年が経った。

相変わらず思うようにライブが出来ない状況が続いていた。

そんな中、楽しみにしていたBBP(ビーボーイパーク)が開催される日が来た。

真夏に代々木公園で行われる日本最大規模のヒップホップパーティーで、ラッパーなら知らない人はいないほど当時はここでライブをする事を目標にしたラッパーが多かった。

勿論、僕らもBBPでライブする事を夢見ていた。

 

後にライブDJをしてくれるワンカップさんと初めて会ったのもこの2007年のBBPだった。

 

ミュージックビデオでしか見た事のラッパーが次から次にステージに出て来る。

手元の缶ビールを飲むタイミングを忘れてしまうほどにあっという間に時間が過ぎて行き、陽が落ちた帰り道にセミが鳴いていた事に初めて気付いた。

 

疲弊していた心やモチベーションが渋谷駅までの下り道とは反比例している様な、久しぶりにDSさんとBOM君とキラキラした目で音楽と今後の話をした。

 

きっと何度も何度もすれ違う感情だと思う。

毎回毎回、立ち止まり悩むと思う。

きっとこの先も何度も何度もすれ違うと思う。

そんな事を考えながら渋谷のスクランブル交差点を渡った。

 

「来年のBBPは出れたらいいですね!」

 

DSさん

「あのステージからの眺めを一度でいいから見てみたいな!」

 
BOM君

「あそこからの眺めを酒の肴に缶ビール飲んだら最高だろうね!」

 

眩し過ぎたステージが脳裏に残ったまま閉じたまぶたは翌日にまた現実を映した。

週末のBBPが夢の様に職場のパソコンに3人で向かい、週末は自分達のライブは無く、開催されているイベントにデモCDを配りに行く。

DSさん
「東京は夏でもあんまり蚊がいないから、蚊取り線香の香りが懐かしいな」

 

上京前の方がライブの数は勝っていた。

福島で活動を続けているDMCメンバーのショウゴ君達と会う機会も減っていった。

 

 

つづく