何もない所から40

何もない所から。

悔しい気持ちだけを持って行こう。
というよりは、悔しい気持ち以外はもう何もない。


成長は何かを得ていくことだと思っていたが、今は失っていくことの様にも思える。
色々なものを失って、それでも生きていくことが成長の様に思えた。

1人で出来ない事を皆と一緒なら出来ると思っていたけれど、そもそも1人で何も出来ない奴が何人集まっても出来るわけがない。

きっと1人で出来る人が集まるからその先でさらに大きな何かを成し遂げる事が出来るんだと思う。

 

年明けに東京で予定されているライブは1本。

1人でライブやってみて続けるかどうかはそこで決めよう。

 
25才の誕生日を迎えた。

気付くと大学の同級生達は結婚したり子供が生まれたりしていた。

結婚式や同窓会に出る度に、からかわれたり、呆れられたり、それらがじょじょに心配に変わっていった。

『お前、大丈夫か?』

『いつまで東京で音楽なんてやってるんだ?』

とか、言われたり。

結果というのは自分が後悔しなければ自己満足でもよかった。

自分の可能性を見切る事が出来たら、それは残念ではあるが、その先の人生でその可能性を削って生きていく事が出来る。
一番恐かったのは可能性を見切る事が出来ず、何も結果を出す事も出来ず、皆の記憶からも消えて行き、ただ後悔だけが残ったまま福島に帰る事だった。

 

【夢は諦めなければ必ず叶う】とは、夢が叶った人間の言葉だ。

 

それまでの僕のラップは1を100にして伝えていた。

そうしなければ、リリック帳が埋まらないし、韻も踏めない。

それも良いけれど、本当は当たり前にある1を1のまま伝える表現の大切さに気付き始めていた。

 

きっかけは久しぶりに帰った実家で祖父母が僕に言った。

『会いに来てくれてうれしい。ありがとう。』

『また東京に行ってしまうのはさみしい。』

という何気ない会話だった。

どんな言葉よりも心に響いた。

1を1のまま伝えたい人に伝えていた。

 

自分は遠回りをしていた気がした。

時間なんて永遠にあるものじゃないから1を1のまま伝えよう。
遠回りした言葉がその人に伝わるほど人生は長くない。

一番近い言葉を使わないと気付いた時に周りは居ないかもしれない。

 
正解なんてものは無いし、あったとしても誰かが導き出した正解だから、同じ道を行っても仕方がない。
出来る事なら誰も立った事のない場所を目指そう。

 

いつか、今を振り返り『大丈夫、まだまだこれからだ』と思えたら良いな。

 

恥をさらし醜かろうが、これ以外自分には無いのだから。



【第2章】何もない所から武器を作る方法へつづく