何もない所から武器を作る方法57

この失恋アルバム『33才のリアル』がもたらしたもの。

 

ある日、NHKの方がこの失恋アルバムを聴いてくれて、大正時代の私小説の様だと感想を頂き、ラジオに生出演する事になった。

そのラジオが偶然実家の家族が良く聴いている番組だった。

 

祖母はラジオから僕の声が聞こえた瞬間からずっと涙を流して聞いてくれたとの事だった。

「あの子は東京でこんなにがんばっていたんだ」と言っていたそうだ。

 

別にNHKのラジオに出ているラッパーは他にもたくさんいるし、周りと比べたら別に大した事ではないのかもしれない。

でも、周りと比べなければ、大した事かもしれない。

どこに価値を置くかだと思った。

 

少なからず、実家の家族が日常で聞いているラジオに僕が登場出来たという事はとても大きな事の様に思えた。

 

ただ、これは僕の失恋を全国にラジオを通じて報告した様なもので、母親から「あなた、失恋したらしいじゃない」と言われた時は真顔で頷くしかなかった。

 

俺さんとの出会い。

 

この時期、偶然ツイッターで俺さんという方に出会う。

俺さんは当時なぜかiPhoneのSiriとMCバトルを繰り広げていた。

なぜか俺さんはツイッターのフォロワーが30万人くらいいた。

 

そして、なぜか僕のファンだと言っていた。

なぜか『33才のリアル』にコメントをしてくれた。

俺さんが僕のWEBSITEのURLをツイートするとサーバーがパンクするほどアクセスがあった。

 

しかも、そのプロモーションに関してお金のやり取りが一切発生していなかった。

救世主かと思った。

 

こんな事があるのかと。

先日のNHKのラジオといい、急に色々な方々が僕を応援してくれた。

 

それは、もしかすると、ずっと昔から僕の曲を聴いていて密かに応援してくれていた方々が、失恋で落ち込んだ僕を見て、手を差し伸べるなら今かもしれないと声をかけてくれた様にも思えた。

 

そうだとしても、こんなにうまい話があるものなのか。

 

俺さんが一体何者なのか気になり始めたある日、上野で一緒にお酒を飲む事になった。

僕は俺さんと会った事がなかったので緊張していた。

 

何となく、ワンカップさんと観音さんも誘ってみた。

1人では不安だったからだ。

 

「デコピンして良いので俺さんとの飲み会に一緒に来てもらって良いですか?」

 

ワンカップさん

「デコピンして良いなら行くよ。」

 

観音さん

「デコピンして良いなら行きましょう!」

デコピンと引き換えに、僕は今まで数々の修(酒)羅場をくぐり抜けて来た2名を仲間に加えた。

 

そして、俺さんが予約してくれた居酒屋に到着した時にある言葉を思い出した。

 

「居酒屋に着いたら店員さんに予約した俺ですと言ってください。」