何もない所から武器を作る方法31

心のどこかで思ってた。

アルバムも7枚リリースしているし、去年サマソニにも出た。

もうそろそろ、B BOY PARK(以下、BBP)に出れるのではないか。

 

7月が終わろうとしたある日、僕の最大のプロモーションツールであるツイッターでツイートした。

 

「BBP僕に5分だけ時間をください」

 

たった一文ではあったがこのツイートには勇気が必要だった。

色々な想いもあった。

 

 

 

2002年の秋、福島県いわき市の先輩(以下、イッキさん)のアパートで。

コンビニで買った紙パックのジュースにストローをさし、夜通しBBPのビデオを見ていた。

ここまで辿り着けたら、間違いなくこの小さな町のヒーローになれる。

 

イッキさん

「見てみろ!こんなにRAP好きな奴が集まる場所が日本にあるってすごくない?俺達が出演するのは夢のまた夢かもしれないけれど。

取りあえず、CDをリリースしたりとかして雑誌とにも載ったりもして、多分その後にやっと辿り着けるんだろうな!

ステージからの眺めを見てみたいなぁ。」

 

とにかく壁が薄いアパートだったから興奮すると声が大きくなるイッキさんは隣人に怒られながら、それでも夜通しBBPへの憧れは尽きなかった。

でも、BBPは遠く大き過ぎた。

その頃の自分達はいわき市でのクラブイベントでさえ出演した事がなかった。

ラップを始めたばかりだった。

 

本当に夢のまた夢のさらに先の夢だった。

 

 

翌年、大学の先輩DJ igacorosasさんがなんとBBPのDJ Battleで優勝した。

そのニュースは一気に大学中、いや町中に広まった。

 

この町からでも手は届く。

その日を境にDJ igacorosasさんと同級生だったイッキさんもBBPに対しての熱を増して行った。

アパートの隣人に怒られる頻度も増えて行った。

 

 

さらに、翌年、ついに高速バスで初めてBBPを見に行く事になった。

8月の夏日の代々木公園野外ステージ。

イッキさんは興奮していたが緊張のせいか普段よりも声は小さかった。

そこには今までビデオや雑誌でしか見た事のないラッパーがたくさんいた。

そして、物凄い数のお客さんがいた。

 

イッキさん

「おい、見てみろ。新舞子ビーチ(いわき市の海岸)より遥かに人が多い。

しかも、この人達、皆HIPHOPが好きなんだよな。

同じ日本じゃないみたいだよね。こんな所でライブ出来たら気持ち良いんだろうなぁ。」

 

日が暮れるまでBBPを楽しんで、帰りのバスの時間まで渋谷を歩いてみた。

 

イッキさん

「おい、見てみろ。数メートルごとにクラブが常にある。

こんな町に住めたらワクワクするね。

やっぱりここが日本の中心なんだね。」

 

全てが新鮮だった。

 

帰りのバスがいわき市に着く頃、夜が明けた。

いつもイッキさんのアパートで朝まで話し込んで帰宅する時とは朝焼けの見え方が違って見えた。

 

 

 

つづく