何もない所から16

1通のメールが来た。

タウン情報誌のメンバー募集広告を見て興味を持ってくれた方からの連絡だった。

僕は早速会いに行くことにした。

小名浜という地区にあるサイゼリアで待ち合わせをした。

 

現れたのはショウゴ君という年は1つ下の強そうなビーボーイだった。
『すごい恐そうな人が来た、どうしよう』というのが最初の印象だった。
ただ話してみるととても礼儀正しく物腰が柔らかかった。
そして、同じ町にこんな人がいたのかというほど日本語ラップに詳しく、ラップの技術や韻の踏み方、発声までどれもレベルが高かった。

 

ショウゴ君

「今、東京では降神というめちゃくちゃヤバい人達いるんですよ!全国にも無名だけどデモCDとか発送してるヤバい人達たくさんいますよ!」

 

ラップの話をめちゃくちゃキラキラした目で語る姿はどこかイッキさんと似ていた。

僕は意気投合してショウゴ君とラップグループを組むことにした。

ショウゴ君の妹のミユキちゃんもラップをしているという事でグループに入る事になり、DJのミツヤマ君と合わせて4人組グループになりグループ名も『D-Factor』に決まった。

ショウゴ君とミユキちゃんのラップスキルとポテンシャルのお陰でいわき市内でのイベント出演が増えていった。
出会わせてくれたタウン情報誌の会社主催のイベントにレギュラーで出演するようにもなった。

 

音楽活動が少し軌道に乗り始めた頃に

ずっと目を背けていた就職活動と向き合う時が来た。
周りは内定を取り始め、どこか顔つきも大学生から来春の社会人生活を見据えているかの様に変わり、大学構内の髪の色もじょじょに黒くなっていた。

 

ある日いまだに就職活動を始めていない生徒だけが大学の就職課に呼び出された。

 

横を見るとノースカントがいた。

ノースカントは僕の分まで卒業研究の塩ビ管スピーカーを制作していたのでまだ就職活動をしていなかった。

 

さらにその隣にはDJのミツヤマ君もいた。
ミツヤマ君は一緒に音楽活動をしていたので就職活動をしていなかった。



つづく