何もない所から9

いつかライブに呼ばれる日に向け曲制作を始めた。

イッキさん

「お前らもっと韻を踏め!」

イッキさん

「もう日常会話でも韻を踏め!」

 

イッキさん

「JINROをミルクティーで割るとヨーロピアンな味になる!」



3人で活動を始め、あっという間に半年が過ぎた。

僕らは20才になり、一個上のイッキさんは21才になっていた。
夜中に部屋で小声でラップの掛け合いの練習をしては新しいお酒の割り方の研究に明け暮れていた。

そんなある日、ノースカントが突然の無期限活動休止を発表した。

理由は誰かに恋をしたり、他の事に興味が出たり、まぁ、そんな感じだったと思う。
特に止めなかった。
ライブに出演出来ていたりしたらモチベーションを保てたのかもしれないけれど、一本もライブが決まらないままだった。
流行に乗ってラップを始めた方々もじょじょに辞めていく時期だった。

友達のバンドがライブのフライヤーを配る度に、まだライブに出ていない自分は何かに憧れたその他大勢の一部なんだと自分に言い聞かせた。

モチベーションを保つためにひたすら僕はソロ活動も始めた。
1人で曲を作り、カセットテープに録音して友達にひらすら郵送して聴いてもらったりもした。

だが、それはそれでとても楽しかった。

感想は、みんな笑ってた。

僕は真剣だったが真剣になればなるほど、みんなは笑った。

ショックだったが、それでも誰かに聴いてもらえることが大切なやりがいだった。
いつかこのデモテープを聴いた誰かがライブに呼んでくれるかもしれないと色々なイベントや事務所に郵送した。

ラップを始めてから毎日がワクワクしていた。

明日は何か起きるかもしれないと。


つづく